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「配偶者の税額軽減の特例」の落とし穴
配偶者には、「配偶者の税額軽減の特例」があるから、税金がかからないと思っている方が多いのではないでしょうか。
そうです。おおむね間違っていないとは思いますが、そこには大きな落とし穴があるのです。それは一体どう言うことでしょうか?
それでは、今回のコラムでは「配偶者の税額軽減の特例」の落とし穴について見ていきたいと思います。
【話の前提】
千葉一郎さんが2018年10月にお亡くなりになりました。千葉一郎さんのご家族は、奥様の花子さん、ご長男、ご長女の3人です。千葉一郎さんがご家族に残された財産は1億円です。なお、千葉花子さんには個人でお持ちの財産はありません。
【相続人と税理士との会話】
千葉花子さん:配偶者は税金がかからないと聞いたことがあるのですが、どうなのでしょうか?主人が残してくれた財産が1億円あるのですが・・・
税理士:そうですね。配偶者が取得する正味の遺産額が「1億6千万円」もしくは「配偶者の法定相続分である1/2(5,000万円)」のどちらか大きい金額までは相続税がかかりません。
したがって、
①奥様が全ての財産1億円を相続するなら相続税の総額は0円となります。
②法定相続分で分けた場合、奥様の相続税は0円、ご長男、ご長女はそれぞれ157万5千円ずつかかりますので、相続税の総額は315万円となります。
千葉花子さん:そうなんですね。そうしたら、私が財産のすべて1億円を相続したほうが断然お得ですね!
税理士:確かに今回の相続だけで考えたらそう思いますよね。でも、実はここに落とし穴があるんです。
千葉花子さん:え? それはどう言うことですか?
税理士:今すぐではないですが、いつか花子さんの相続が起こります。これから、その時の事を説明します。
①奥様が全ての財産1億円を相続した場合
花子さんの相続では、法定相続人がご長男、ご長女のお2人となります。
花子さんの相続においては、花子さんが今回相続した財産1億円をご長男とご長女のお2人で相続することになります。
では、その時にかかる相続税がいくらになるか試算してみましょう。
相続税はご長男とご長女にそれぞれ385万円ずつかかることになります。
したがって、相続税の総額が770万円となります。
先ほどお話ししたとおり、一次相続で奥様が全ての財産1億円を相続するなら相続税は0円になりますので、
一次相続と二次相続を合わせた相続税額は、
0円(一次相続)+770万円(二次相続)=770万円となります。
②法定相続分で分けた場合
では、今回の相続で②の法定相続分で相続した場合はどうなるのでしょうか。
花子さんの相続では、花子さんが今回相続した財産5千万円をご長男とご長女がお2人で相続することになります。
では、その時にかかる相続税はいくらになるのか試算してみましょう。
相続税はご長男、ご長女に40万円ずつかかることになります。
したがって、相続税の総額が80万円となります。
先ほどお話ししたとおり、一次相続で法定相続分通りに分けた場合、相続税は315万円になるので、
一次相続と二次相続を合わせた相続税額は、
315万円(一次相続)+80万円(二次相続)=395万円となります。
千葉花子さん:えー!、375万円も変わるんですね!びっくりしました!私の相続の時のことまで考えないとダメなんですね。よかった。相談して。
このように、一次相続で配偶者の税額軽減を最大限活用したケースのほうが、結果的には、2倍近くの相続税を納めることとなってしまうのです。これが「配偶者の税額軽減の特例」の落とし穴なのです。
したがって、この制度の仕組みをしっかり理解して、使い方を間違わないようにしないといけません。