税務トピックス
所得税
ふるさと納税のキホン
今回のコラムでは、年末も近づいていますので、確定申告に関するテーマとしてふるさと納税について見ていこうと思います。
【話の前提】
千葉太郎さんは、大阪で働くサラリーマンです。ご家族は、専業主婦の奥様と大学生の長男、高校生の長女の4人家族です。千葉太郎さんの年収は700万円です。
【税理士との会話】
奧様:この間、ママ友から「ふるさと納税ってお得だよ!」って聞いたのですが・・・
ふるさと納税って言葉は聞いたことあるのですがよくわからなくて・・・それで今日は相談しにきました。
先生、ふるさと納税って一体なんですか?
税理士:ふるさと納税を簡単に説明すると、自分の故郷とか応援したい市町村に寄付をすると寄付金額のうち2千円を超える部分について、所得税と住民税から原則として全額が控除される制度です。
奥様:・・・すみません。いまいちよくわかりません。
税理士:すみません。わかりにくかったですね。
例えば、どこかの地方自治体に1万円寄付をしたとします。そうするとその年分の税金が、【寄付した金額1万円-2千円】の8千円分安くなります。
寄付した金額から2千円を差し引いた金額、例えば3万円なら2万8千円、10万円なら9万8千円税金が安くなるんです。
具体的には、今年寄付した金額を来年の3月に確定申告することで、寄付した金額の一部が今年分の所得税から減額(又は還付)され、その残りの金額が来年納める住民税から減額されるのです。
奥様:1万円寄付して、8千円税金が安くなるって・・・損してませんか?
しかも来年の税金を安くするために今年寄付するんですよね?
だったら今1万円寄付せずに、来年1万円税金納めた方がいいですよ!!
税理士:確かにそうですね。これだけなら、来年払うべき税金を前払いして2千円損していることになりますね。
実は、ふるさと納税は、自治体によっては寄付すると「返礼品」をもらえるという特徴があります。返礼品には、お米、お肉、ビール・・・その地方の特産品が多いです。
1万円寄付すると、およそ3千円相当(還元率約3割)の品がもらえるのが最近の相場です。
【かつては、商品券・旅行券といった金券類や電化製品や家具、アクセサリーなどの資産性や換金性が高い豪華な返礼品を送付する自治体が多発し、話題となりました。今後は総務省の指導により、返礼品は還元率3割以内、かつ、地場産品に限定される見通しです。】
ですので、1万円を寄付してくれたお礼として自己負担2千円で3千円相当額のお米、お肉などの特産品をお礼としてもらえることになります。
5万円寄付したら、自己負担2千円で1万5千円相当の特産品がもらえるわけです。
奥様:そういう事なんですね。
では、1万円ふるさと納税する場合には、
①今年、自治体へ1万円寄付する。
②3千円相当の返礼品がもらえる。
③来年は、今年寄付した1万円から2千円を差し引いた8千円が、来年払うべき税金から控除される(一部は確定申告で税金が返ってくる)。
って言うことは、返礼品相当額から2千円を差し引いた分が実際に得する金額ってことですね!
税理士:そうです。そういう事になります。
ふるさと納税は、税金を前払いする性格の仕組みなので節税効果はありません。でもその代わりに自己負担2千円でそれ以上の返礼品がもらえるところに魅力があります。
ただし、実際に寄付をするには、現金が出ていくわけですから、お金に余裕がないのにふるさと納税すると家計が苦しくなりますから無理のない範囲でするほうが良いです。
サラリーマンの方でしたら、ボーナス月にふるさと納税をするのも良いかもしれませんね。
奥様:なるほど。ということはたくさん寄付したほうが2千円の自己負担でたくさんの返礼品をもらえてお得なんですね!
税理士:いえ、税金が安くなる寄付金については、年間の上限が決まっているんです。
収入の少ない人や、家族を養っている人はそもそも払っている税金が少ないですから、寄付金の上限も低くなります。逆に、独身や夫婦共働きで高収入の人は税金をたくさん払っていますので上限額が高いです。
では、実際、千葉さんのふるさと納税の上限額を調べてみましょう。
ふるさと納税の各種ポータルサイトをみると、控除額シミュレーターがたくさん公開されていますので、それを利用すると簡単に寄付金の上限額の目安を知ることができます。
総務省のサイトに『全額控除される ふるさと納税額(年間上限)の目安』が掲載されているので、実際に見てみましょう。
『年収700万円で夫婦+子2人(大学生と高校生)』ですと、ざっくり、年間6万6千円となります。
奥様:そうなんですね!うちは子供たちが食べ盛りなのでお米とかがいいかな~
これからどんな返礼品があるかじっくり調べてみます!
あー、もっと早く相談すればよかった!もう10月だし・・・6万6千円はちょっと厳しいから今年は2万円くらいにしてみます。
サラリーマンであれば、ふるさと納税ワンストップ特例制度を利用しましょう!
ふるさと納税は、これまで確定申告をする必要があったので、若干抵抗があったと思います。しかし、ふるさと納税ワンストップ特例制度という制度が2015年4月から始まっていますので、それ以降にふるさと納税を実施している方は、確定申告が不要となります。
寄付金上限額内で寄付した金額のうち、2千円を差引いた金額が来年の住民税から全額減額されます。
ただし、3つの条件があるので確認しておきましょう。
①もともと確定申告をする必要がない給与所得者であること
②2015年4月1日以降にふるさと納税をしていること
③1年間の寄付先が5自治体以内
ワンストップ特例には「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」という書類が必要です。確定申告不要に必要な書類なので、必ずふるさと納税先の自治体に申請しておきましょう。
自治体によっては、特産品と一緒に書類を送付してくれるところや、別途請求する自治体もあるので注意しておきましょう。