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民法改正~「自筆証書遺言の方式緩和」
2018年7月6日、相続に関する民法等の規定を改正する法律が成立しました(同月13日公布)。
今回の改正は、1980年に配偶者の法定相続分を3分の1から2分の1に引き上げた改正以来、約40年ぶりとなる大きな見直しとなります。
具体的な改正内容としては、「配偶者居住権」の創設、「預貯金の仮払い制度」の創設、「法務局における自筆証書遺言の保管制度」の創設、そして、相続人以外の親族が被相続人の介護等をした場合に「特別寄与料」の支払を請求できる規定も創設されました。
今回のコラムでは、「自筆証書遺言に関する改正」の内容についてみていきたいと思います。
自筆証書遺言(改正前・現行)
自筆証書遺言とは、全文を自分で書く遺言のことです。
紙とペンと印鑑を用意すればご自身で手軽にいつでも費用をかけることなく作成できるところが大きなメリットであり、数多く利用されているようです。
ただし、自筆という言葉通り、自筆遺言証書は、ご自身で書く必要がありますので、代筆やワープロやパソコン使用によるものは無効となります。
その全文を形式不備にならないよう自ら作成することは難しく、せっかく作成した遺言書が無効になる事例も少なくありません。
また、自筆証書遺言には遺言書が発見されないといったリスクや、家庭裁判所での検認手続が必要であるため遺言執行まで時間がかかってしまうなどのデメリットもあります。
民法改正による自筆証書遺言の改正内容3つのポイント
①自筆証書遺言の方式緩和
自筆証書遺言を作成する場合、全文を自筆で行う必要があります。今回の改正では、自筆証書遺言に相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録は自筆することを要しないこととなります。
したがって、財産目録を別紙として添付する場合には、パソコン等で作成しても問題がないということになります。
ただし、その別紙の全てのページに遺言者が自ら署名・捺印をする必要があります。
新制度はいつから適用?
この見直しについては、公布日(2018年7月13日)から6ヵ月経過日の2019年1月13日から施行されることになります。
②自筆証書遺言の保管制度の創設
自筆証書遺言のデメリットといわれる紛失や改ざん等を防止するために、法務局に自筆証書遺言の保管を申請することができるようになります。
手続きの流れについて
遺言者本人が法務局に自筆証書遺言(無封のみ、原本)を持参し、保管申請をします。
この申請は必ず遺言者自身がする必要があり、代理申請はできませんので注意が必要です。
本来自筆証書遺言は、日付や署名・押印があれば様式や封印の有無は自由とされていますが、この制度を利用する場合には法務局の審査の都合上、「法務省令で定める様式」で作成した「無封」の遺言書である必要があります。
保管の申請を受けた法務局では、遺言書の形式を審査し、日付の誤りや署名や押印もれなどの方式不備がないかチェックを行います。
そして、法務局で遺言書の原本が保管されるとともに、画像情報が共有され、全国の法務局から画像データにアクセスすることができようになります。
遺言者の死亡後、その関係相続人(相続人・受遺者・遺言執行者など)は法務局に対して遺言書原本の閲覧を申請・請求することが可能となります。
新制度はいつから適用?
遺言書保管法の施行期日は今後政令で定められることになりますが、公布の日(2018年7月13日)から2年以内に施行されることとされています。
施行前には法務局に対して遺言書の保管を申請することができないので注意が必要です。
③遺言書の保管制度を活用することで「検認」が不要に
法務局の自筆証書遺言保管制度を利用した場合には、自筆証書遺言の検認手続きが不要となります。
従来、検認のために行っていた裁判所への申し立てやその必要書類としての戸籍の収集、裁判所への訪問等の手間が省略できるようになります。また、遺言の検認には1ヶ月以上の期間がかかりますが、この期間を待つ必要もなくなります。
したがって、相続人等は遺言書に基づいてすぐに遺産分割手続きに入ることが可能となります。