税務トピックス
相続対策
遺言書の探し方
亡くなられた方が遺言を残していた場合には、原則として遺言の内容に従って相続手続きを行うことになるため、遺言の有無により相続の手続きは大きく変わります。
相続人が遺言の存在を知らされていない場合でも、遺言が残されているということは考えられます。
自宅や病院、入所していた施設での保管庫、貸金庫内などに遺言が残されていることもありますので確認する必要があります。
今回のコラムでは、遺言書の探し方について見ていきたいと思います。
遺言書を探してみましょう
遺言書には主に3種類があります。
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言
遺言書の種類によって、保管されている場所は異なります。
遺言書は複数作ることも可能であるため、どの形式の遺言を作成したのか分からないこともあります。思い当たる場所は全て探した方がよいでしょう。
①自筆証書遺言の探し方(※自筆証書遺言については、2020年7月13日までに法改正があります)
自筆証書遺言がどこにあるのか、その保管場所に答えはありません。
遺言者が生前に、保管場所を誰かに伝えていればそれがヒントになりますが、そうでないのであれば様々なところを探さなくてはなりません。
この後説明しますが、自筆証書遺言には公正証書遺言の「遺言検索システム」のような調査方法はありません。
したがって、相続人が遺言の保管されていそうな場所を地道に探すことになります。
そして、残念ながら遺言書が発見されないままとなってしまう可能性も考えられます。
※自筆証書遺言についての法改正については⇒民法改正~「自筆証書遺言の方式緩和」
被相続人が自身で保管しているケース
遺言者が自身で遺言書を保管している場合、一般的には次のような場所が考えられます。これらはあくまでも一例であり、それ以外の場所に保管している可能性も十分にあります。
- 自宅金庫
- 机の引出し
- タンスの引出し
- 本棚
- 金融機関の貸金庫
- 仏壇、神棚
誰かに預けているケース
遺言者が信頼できる第三者に遺言書を預けている場合もあります。預け先としては、次のような方が考えられますが、こちらもあくまで一例であり、それ以外の人に預けている可能性も十分にあります。
- 信頼できる親族、友人、知人
- 付き合いのあった弁護士、税理士、司法書士、行政書士等の専門家
- 信託銀行
- 檀家となっているお寺や菩提寺
自筆証書遺言は開封厳禁です
自筆証書遺言は、相続人が勝手に開封してはいけないことになっています(民法第1004条)。
つい開封したくなるのが心情ですが、中身を出して確認することは法律によって禁止されています。
見つけた遺言書を開封するためには、まず家庭裁判所にて、「検認」という手続きをしなければなりません。
もし勝手に自筆証書遺言を開封した場合、5万円以下の過料に処せられる可能性がありますので注意が必要です。
遺言を発見した相続人は、検認手続きをするようにしましょう。
②公正証書遺言の探し方
公正証書遺言は、その原本が公証役場に保管されています。
公証役場には「遺言検索システム」が導入されており、公証役場に検索依頼をして照会をかけることで、被相続人の遺言の有無を確認することができます。
なお、このシステムは全国どの公証役場で作成されたものであっても、最寄りの公証役場にてその存在の有無を調査することが可能となっています。
このように公正証書遺言は、遺言検索システムによって、相続人が被相続人の遺言があるのかどうか、ある場合にはどの公証役場にあるのかを調べることができます。
平成元年以降に公証役場で作成された公正証書遺言であれば、調査を行う事ができます。
公正証書遺言の存在が判明した場合、その公証役場に行き、公正証書遺言の謄本を請求することができます。
なお、遺言を作成した方が存命中に照会できるのは遺言者本人に限られます。したがって、遺言者の家族でも照会することはできません。
遺言者が亡くなった後に、法定相続人・受遺者・遺言執行者の方などが、遺言検索システムによる照会を公証役場に依頼する事ができるのです。
遺言検索システムを利用するのに必要な書類
③秘密証書遺言の探し方
秘密証書遺言は、公正証書遺言同様「遺言検索システム」を利用することにより、その有無を確認することができます。
ただし、公正証書遺言と異なり原本が公証役場に保管されていないため、秘密証書遺言の有無しか分かりません。
つまり、秘密証書遺言がもしあったとしても、その遺言の内容までは公証役場で知ることができません。
秘密証書遺言作成後、秘密証書遺言の正本は遺言者が保管することになりますので、秘密証書遺言があることが分かったときは自筆証書遺言同様に相続人が被相続人の遺言が保管されていそうな場所を地道に探す必要があります。
秘密証書遺言は開封厳禁です
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に、相続人が勝手に開封してはいけないことになっています(民法第1004条)。
秘密証書遺言を発見した相続人は、家庭裁判所で検認手続きをするようにしましょう。