税務トピックス
相続対策
遺言書の基本
亡くなられた方が遺言を残していた場合は、原則として遺言の内容に従って相続手続きなどを行うことになります。
したがって、遺言は相続に大きな影響を与えます。
今回のコラムでは、遺言書の基本を確認していきたいと思います。
遺言書
遺言書とは、被相続人(亡くなられた方)が自分の死後に自分の財産を誰に対し、どのように分配するかなどを記載したものです。
相続人同士が、遺産相続で争いが起きないようスムーズに相続手続きができるようにするためには、欠かすことができないものと言えます。
遺言の効果
遺言により、法定相続分とは違う割合で相続させたり、法定相続人以外の者(内縁の妻など)に財産を残したりすることができます。
したがって、遺言書に書かれた内容については、法律で定められた相続割合(法定相続分)よりも優先されることになります。
ただし、遺言の内容が遺留分を侵害する場合には、遺留分減殺請求により当該害する遺言部分を無効とすることができます。
遺言の種類
遺言の方式は、大きく分けて普通方式と特別方式の2種類があります。
普通方式には、
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
の3つがあります。
特別方式は、生命の危機が迫るような緊急時のなど特殊な状況下にある場合に例外的に作成される方法であり、通常は普通方式が用いられます。なお、特別方式には4つあります。
自筆証書遺言(※自筆証書遺言は、2019年1月13日法改正があります)
自筆証書遺言は、遺言する人が自ら、その内容、日付、氏名の全てを自筆で書き、押印して作成します(民法968条)。
自筆証書遺言という言葉通り、全文を自筆で作成する必要があります。
したがって、代筆やパソコンによるものは無効となります。
押印は実印である必要はありませんが、偽造等の防止のためには、実印を使用するのが望ましいとされています。
自筆証書遺言のメリット
・最低限の紙、ペンと印鑑だけあれば、誰でも気軽に作成が可能で費用もかかりません。
・遺言の存在及びその内容を秘密にすることができます。
自筆証書のデメリット
・相続人や第三者による偽造・変造・隠匿の危険性があります。
・書き間違えや遺言内容が曖昧で遺言書として無効になってしまうことが少なくありません。
・発見されない可能性があります。
・家庭裁判所での検認手続が必要となります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、証人2人の立会いのもと、公証人が遺言者の口述に基づいて遺言書を作成し、遺言者、証人、公証人が署名押印して作成します(民法969条)。
遺言者が口頭で述べる遺言内容を基に公証人が遺言書を作成します。
実務上は、事前に公証人と遺言作成について打合せを行い、公証人が文案を作成しておいた上で、内容に問題がなければ実際の遺言作成手続きに進みます。
なお、口がきけない人や耳が聞こえない人も、手話通訳者や筆談を用いて公正証書遺言を作成することができます。
また、公証人は、原則として、判事や検事などを長く務めた法律実務の経験豊かな者で、公募に応じた者の中から、法務大臣が任命することになっていますので、公正証書遺言は、内容的にも形式的にも法律上の不備がない遺言書を作成することができます。
作成し終わった遺言書は、原本が公証役場に保管され、遺言者が受け取ることができるのは、正本、謄本、抄本の「写し」になります。
なお、これらの「写し」は、原本と同じ内容が記載されていることを公証人が署名して保証しております。
公正証書遺言のメリット
・公証人が作成に関与することで確実に有効な遺言書を残すことが可能となります。
・原本が公証役場で保存されるため、変造や滅失のおそれがありません。
・検認手続は必要ありません。
公正証書遺言のデメリット
・作成に手間と費用がかかります。
・証人から内容が漏れる可能性があります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言者が作成した遺言に封を施し、遺言書が封入されていることを公証人役場で公証してもらう方法により作成します(民法970条)。
つまり、遺言の内容は秘密のまま、遺言の存在のみを公証人に証明してもらうことになります。
したがって、秘密証書遺言は、公証人の関与があっても記載内容の法的有効性が確保されるものではありません。
この場合の遺言は、自筆証書遺言とは異なり、自筆でなくてもよく、他人による代筆、パソコンを使って作成も可能となります。
このように作成した遺言書を持って公証役場に行き、遺言者は、公証人及び証人の前にその封書を提出し、自己の遺言書であること、自らの氏名及び住所を申述します。
そして、公証人が、その遺言書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載したのち、遺言者及び証人とともにこれに署名押印して、遺言書が作成されます。
秘密証書遺言のメリット
・遺言の内容を秘密にでき、偽造や変造などが防げることができます。
・遺言が作成者本人によって作成されたことを証明することができます。
秘密証書遺言のデメリット
・書き間違えや遺言内容が曖昧で遺言書として無効になってしまうことが少なくありません。
・作成に手間と費用がかかります。
・公証役場で公証人に証明してもらいますが、遺言自体は公証人は保管しませんので、作成した遺言が発見されない恐れもあります。
・検認手続が必要となります。
特別方式の遺言
特別方式には、
・一般危急時遺言(疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言する場合)
・難船危急時遺言(船舶遭難の場合において、船舶中にあって死亡の危急に迫った者が遺言する場合)
・一般隔絶地遺言(伝染病で隔離された者が遺言する場合)
・船舶隔絶地遺言(船舶中にある者が遺言する場合)
の4つがあります。
おすすめの遺言
以上、3種類の遺言書「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」のメリットとデメリットを見てきました。
それぞれの特徴を理解したうえで、自分の意思や目的にあった種類の遺言書を選ぶのが良いと思います。
なお、どの遺言書が良いか決めかねている方に、おすすめする遺言書は、それぞれ一長一短あるものの、特段の事情がない限りは、法律の専門家である公証人が作成する公正証書遺言です。
公正証書遺言は、形式の不備で無効になったり、第三者によって改ざんされたり、遺言書そのものが紛失してしまう等の心配がありませんので安心です。